決戦、スズメバチ駆除DIY 前編
前日。
俺は遺書を書くべきか本気で悩んだ。
作戦を人に話すとことごとくそれはヤバイ、という反応なのだ。
作戦はこうだ。
俺、大量の蜂スプレー(5本で6500円!)
友人の矢島(仮名)、エアガンで巣を撃破
屋根裏部屋で密室のため、スプレーが拡散せずよく効くはず、また屋根裏の出入り口は一箇所なので蜂の攻撃ルートも一箇所に絞られるから防御もしやすいという公算だ。
最初はスプレーで援護射撃、エアガンで蜂の巣がぶら下がってる根元を撃ち落とし、蜂たちには引っ越しをしてもらう予定だった。
(この細い木と繋がってる弱い部分を狙うイメージ)
読みが外れて反撃され、蜂たちに囲まれるとおそらく死ぬ。
俺には防護服がないのだ。
あと、半袖しか持ってきていない。
当日。
17:00(ヒトナナマルマル)
装備品を携え、矢島が駆けつける。
アサルトライフル、スプレー缶5本、防塵マスク、防護服代わりのうっすいメッシュの使い捨て作業用つなぎ。頭は蜂マスクみたいなものが一つ。
彼は下にウインドブレーカーを着込んでできる限りの備えはしていた。
一方俺。
黒の長ズボン(夏素材、通気性◎貫通性◎)
半袖(薄手)
この上に防護服風味の使い捨てのつなぎ(通気性◎貫通性◎)
以上。
もはや防御力は皆無。
防御担当なのにあまりの装備の頼りなさに俺はブルっていた。
すると矢島
「俺が1人で殺る」
目が真っ赤に充血している。バーサーク状態だ。
しかし俺の物件。友人1人を死地に追いやることはできない。
俺は覚悟を決めて、つなぎのジップをあげた。
すると勢い余ってジップが壊れた。
(イメージ)
唯一の盾であった使い捨てのつなぎが使い物にならなくなった。
俺は前がフルオープンになったつなぎを着たまま、戦地へ向かうことになった。
むしろつなぎの中に入られたらヤバイから脱ぐべきか迷ったが、そこまで接近戦になった時点で俺の負けだ。
俺は覚悟を決めた。
敵地に足を踏み入れる。
くるみがキュッと縮み上がる。